水をつくる社員ブログ
水処理サロン その61
2018-05-24
T : プラント設計担当 53才
E : 営業担当 42才
E 「トラブルではないんですが、聞いてくれます。」
T 「ん?また腐食系ですか?最近そればっか。」
E 「リアルで起きてるんだから、しかたないでしょ。」
T 「そだね。はい、聞きましょう。」
E 「客先から、塩酸35%用のFRPタンクの見積依頼が来たんですが・・・」
T 「タンクメーカーが塩酸用では、お売りできません・・・・と、言われた。」
E 「はい、そうです。」
T 「ネットで調べれば、事故報告や、劣化報告が出てくるよ。」
E 「聞いたことあります。死亡事故ですよね。」
T 「その事故起きた時にね、ちょうどFRP製の苛性ソーダタンクの天板に、計量槽を設置する工事を
していて、さんざん、もめましたよ。」
E 「それで、どうしたんですか?」
T 「事故は塩酸タンクなので、苛性ソーダでは大丈夫です・・・と、言ったんですが・・・」
E 「凄い~。原因解っていたんですか?」
T 「いや、全然。・・・でも、結局認められず、天板に荷重が掛からないよう門型の柱を建てました。」
E 「それって、結果としては、賢明な判断ですね。」
T 「まあ、そうだね。で、後にその事故が起きた実際のタンクのサンプル片の調査で、完全に原因と
経過が解明された報告書が出されました。」
E 「読みましたよ。塩酸で痛むのでは無く、塩化水素ガスでFRPのカルシウムが抜けて、塩素が替わりに
増えるって、書いてました。」
T 「それで、ガラスが侵されて、FRPが剥離していき、薄くなって強度が無くなるようですね。」
E 「原因がガスなので、側板や底板ではなく天板が痛むので、事故が起きると言うことですね。」
T 「紫外線によるFRP表面の脆化は、そのサンプルでは全く問題は無かったんですが、天板厚みの
内面から半分以上が変質剥離して、強度は新品の20%まで低下していたらしいです。」
E 「それじゃ、持たないですね~。う~、恐ろしや~。」
T 「だから、今後は引き合いのあった時点で、客先に説明した上で、お断りしてポリエチレンタンクを
お薦めしましょう。」
E 「了解しました。・・・シンミリ・・・」
-次回には続きません。-
水処理サロン その60
2018-04-27
T : プラント設計担当 53才
A : 装置設計担当 43才
A 「5年前のSUSの散気管が腐食しましたよ。」
T 「え?俺?最近腐食ネタが多いね。」
A 「そう、あなた。はい散気管の写真をどうぞ。」
T 「各々の散気装置の間のループ管の上面が腐食で穴開いてるね。」
A 「程度の差はあれ、各散気装置間が全部痛んでますね。」
T 「共通しているのは、流速の遅い部分に集中してる事だね。」
A 「汚泥が堆積して、その部分が腐るなんてあるんでしょうか?」
T 「ここの原水が口に入ったことがあるんだけど、すごく苦くて渋いんです。」
A 「げろげろ。ここのBODかなり高かったですよ?」
T 「・・・で、成分的には芒硝=硫酸ナトリウムでした。それも%オーダーです。」
A 「ステンレスでは、もたないんですかね?」
T 「耐蝕表からは、問題ないです。それよりも、電解液なんで、電触っぽいですね。」
A 「これも電触なんですか?」
T 「電池型の電触は、異種金属間のガルバニック電触、塩濃度差による塩濃淡電触、酸素濃度差による
通気性電触があります。」
A 「ガルバニック電触も塩濃淡電触も関係なさそうなので、通気性電触ですかね?」
T 「そうですね。散気管上面に流速があって酸素が有り、下面は汚泥体積で絶対嫌気状態としたら、
上面部分は、カソード極なので還元して、金属が電離腐食する可能性があります。」
A 「材質をSUS316に交換しても効果は無いですか?」
T 「耐蝕表では、硫酸根に対しての耐蝕差はありませんでしたね。亜硫酸根にはSUS304のほうが
弱いみたいですが・・・」
A 「この場合、成分や濃度よりも、強い電解性の環境中であることの方が問題なんですね。」
T 「う~ん、そうでしょうね。あまり、知見は無いんで答えにくいけど、金属は無理かも知れませんね。」
A 「じゃあ、今回どうすれば、いいんですか?」
T 「・・・・・塩ビが正解じゃない?水温ひどく高いし、HTに交換したらどうですか?」
A 「じゃあ、水替えも含めて、見積と施工要領作って下さいね。-キッパリ-」
T 「それではまた~~~。」
-次回には続きません。キッパリ-
水処理サロン その59
2018-03-30
T : プラント設計担当 53才
E : 営業担当 42才
E 「修理お願いします。活性炭塔が腐食で穴が空いて、漏水してます。」
T 「え?うちの製品なの」
E 「いえ、うちじゃないんですけど、”デクロライザ-”って呼んでますけど。」
T 「それは、ただの脱塩素塔っていう意味でしょうね。」
E 「そうなんですか?食品の用水処理でステンレス製なんですけど・・・」
T 「うちのじゃ無ければ、ほっとけば、いいじゃない。」
E 「営業はそうも行かないんですよ。。。製作会社はもう無いらしいですし・・・」
T 「・・・じゃあ、状況を聞きましょうか?ステンレス製って言ってたよね。」
E 「ステンレス製の内面エポキシ塗装らしいです。」
T 「そりゃ、活性炭塔としては問題あるなー。」
E 「ステンレスでも傷むんですか?」
T 「まずは塩素分解のメカニズムから話します。酸化力の強い遊離塩素や持続力の長い
結合塩素は、有機物と接触すると酸素を放出して、対象物を酸化します。」
E 「活性炭は、炭化しているのに、まだ、酸化分解するんですか?」
T 「表面の電位がマイナスであることも要因ですが、元はヤシ殻なので有機物も残っています。
製品によって、差異はありますが新炭で5%前後です。しかも、活性炭の主成分の
炭素でさえ酸化の対象です。」
E 「再生炭を、塩素吸着に使わないのも、そのへんに理由があるんですか?」
T 「そうですね。廃炭の再生温度は800℃くらいなので、新炭よりも有機物は少ないです。
そもそも、有機物=強熱減量と考えると、強熱減量温度は300℃なので、ほぼ0です。」
E 「それに、熱再生すると目減りするのは割れるからでしょ・・・強度も落ちるみたいですね。」
T 「なので、より硬い活性炭が望ましいです。 で、分解された次亜塩素酸ソーダは、ナトリウム、
酸素、塩素の化合物になります。」
E 「全て、イオン化していたら全部金属に害になりますね。・・・じゃあ、塩素吸着塔では無いんですね。」
T 「そうですね。次亜塩素酸ソーダ分解塔ですかね・・・だから、SSで内面ゴムライニングで、外面
耐蝕塗装すれば、高価なステンレスの意味が無くなりますね。」
E 「じゃあ、今回どうすれば、いいんですか?」 T 「うちの標準に交換すれば?」
E 「だから~~~ (聞かなきゃ、良かった・・・・泣)
-次回には続きません。-
水処理サロン その58
2018-03-01
T : プラント設計担当 53才
Y : 電気設計担当 42才
Y 「はい、続きです。前回はDOの立ち上がりを測定しました。」
T 「これで、送気量とDOの上昇量は解りました。ちなみに送気は、3.92h^-1。DO上昇は0.9mg/L・min
でした。」
Y 「お~h^-1は曝気強度の単位ですね。そこで、呼吸速度:Rrの加算ですね。」
T 「はい、Rrの測定値は、23.1mg-O2/L・hでした。」
Y 「それは、高いんですか?低いんですか?」
T 「MLSS5000mg/L程度なので、Krは4.6mg-O2/g-MLSS・h。これは充分、酸化分解が終わった
後の基礎代謝呼吸量です。初期呼吸は、約5倍の24mg-O2/g-MLSS・hでした。」
Y 「数字が多くて、疲れてきました~。まだ、続きます?」 T 「もちろん。 -キッパリ- 」
T 「これら全てを1m3・h当たりに換算すると、曝気槽1m3に対して、1時間に3.92m3の送気により
77.1gの酸素が移動したことになります。」
Y 「ひ~もうだめです・・・・・」
T 「最後です。3.92m3の空気中には、1.64kgの酸素が含まれます。よって溶解効率は
4.7%となります。」
Y 「ひ~時間かかったですけど、溶解効率悪いです~~~」
T 「そうですね、散気装置の性能判定の場合は、実際にはこれに、温度補正と酸素の飽和点降下の
プラス補正と水圧によるマイナス補正をするんですが、その誤差は大きくは無いです。
まあ、今回の結果は溶解効率は5%ぐらいでしょうね。数値的には水温30℃、
酸素飽和濃度7mg/L(実測)、平均水圧25kPaで補正してみて下さい。」
Y 「ひ~~それなんとかしないと、いけないんじゃ無かったんですか?」
T 「はあ、そうですか?MBRユニットの散気装置は、クロスフローの流速への変換量が大きくなるよう
粗気泡なんです。よって、溶解効率はあっても4%程度だと思います。」
Y 「じゃあ、10~15%なんて、高溶解効率の散気装置が入っていた方が困ってたと・・・?」
T 「そうですね、まあ、その時は、予備散気装置を仮設して、帳尻を合わせばいいと思うんですが。」
Y 「なんか、大変な工事でしたね?」
T 「そうですよ、ここで大切なのは、改造後の能力はもちろんUPしてるんですが、その仮設状態時に
設備が耐えられるのか、どうかというところです。」
Y 「ん~能力不足で、仕方なく増強するような状態では、この工法は使えないみたいですね。
まあ、なにはともあれ、お疲れ様でした。」
T 「はいはーい。 \(ToT)/ 」
- 次回へ続きません。 -
水処理サロン その57
2018-01-24
T : プラント設計担当 53才
Y : 電気設計担当 42才
T 「散気装置の溶解効率の測定方法から、しゃべっちゃいます。」
Y 「はい、よろしくお願いします。」
T 「まずは、定常状態で曝気槽のDO分布を測ります。」
Y 「なぜ、DO分布なんですか?」
T 「知りたいのは、水槽の酸素保有量ですから、測定ポイントは多ければ多い方がいいですね。
今回は、曝気槽1槽で30ポイント測りました。」
Y 「たくさん取るんですね?」
T 「でも、水深5mで深度別5ポイントを6ヶ所だから、そうでも無いんじゃない。」
Y 「注意点は、なんでしょうか?」
T 「ポイントを出来るだけ均等間隔でとるのは当然ですが、それよりも、ディヒューザの種類、劣化度
取り付け高さ、水深等条件が違うと水槽個々に測定する必要があります。
今回は、水槽形状、散気装置、経年劣化度合いが全て同じだったので、一番
呼吸速度の低い、最終曝気槽で測定しました。」
Y 「そこは、まさしく膜ユニットを仮設設置する大事な水槽ですね。」
T 「はい、そうです。膜ユニットの仮設する場所あたりの底の形状を棒でつついて確認したり・・・」
Y 「えらく原始的ですね?(笑)」
T 「そりゃ、水平に設置できないと散気が不均等になって、新品膜を詰まらせかねないですから。」
Y 「なるほど、で、結果はどうだったんですか?」
T 「まず、平均DOは最終曝気槽で、少し高めで4.3mg/Lでした。4.3g/m3です。」
Y 「ほんとですね。少し高め?」
T 「で、一度曝気を停止します。SVは80%くらいなので全体のDO低下にそんなに時間はかかりません。
3~4分くらいです。まあ、DOメーターで確認しながら、低下を待ちます。」
Y 「測定点は、計測ポイントの中から平均DOに近く、流速が安定している部分で測ればいいですね。」
T 「なんせ、DOメータは1台しか無かったからね。DOがゼロになったら、曝気開始です。DOの上昇を
表にプロットすると、DOの下上端は曲線に寝ますが、中央部は直線に乗ります。」
Y 「呼吸速度曲線ににていますね?勾配は逆ですが・・・」
T 「そりゃあ、どちらも酸素移動速度なので、DO飽和不足量に比例するから、似るんでしょ。」
Y 「やや、もうページがないですよ。どうしましょ。」
T 「そりゃ、次週に続くでしょ。」 Y 「引っ張りますね~。^^」
- 次回へ続く -